『やめたい』と言われたらどうする?オンライン講座の契約解除で事業者が注意すべき点

前回は業務委託契約の終了方法についてお伝えしました。
今回は、消費者向けの契約の代表の一つである「オンラインセミナー契約」の終了方法についてご紹介します。

オンラインセミナー契約は、事業者(主催者)と消費者(受講者)の間のB to C契約(「消費者契約」)です。
消費者契約については様々な消費者保護のための規制が事業者に課せられていますが、契約の解除についてもB to B(事業者間)の契約である業務委託契約と異なり、消費者保護の観点から特別な配慮が必要となります。

消費者契約を終了する主な方法として、以下の3つが挙げられます。

1. クーリングオフ制度

クーリングオフとは、特定の種類の契約について法律上認められた、消費者が一定期間内であれば無条件で契約解除できる制度です。
オンラインセミナーをどのように勧誘するかによってクーリングオフの適否が決まりますので、ご留意ください。

ポイント💡

  • 訪問販売や電話勧誘販売に該当する場合は適用あり
    訪問販売や電話勧誘販売の場合には、顧客に契約を申し込むか否かの熟慮期間を与える必要があることから、特定商取引法上、クーリングオフが認められています。
    クーリングオフの期間は、事業者に義務づけられている「契約内容を記載した書面」を顧客に交付した日から起算されますので、書面を交付していないと永続的にクーリングオフ期間が続いてしまうことになり、注意が必要です。
     
  • 顧客からの自主的な契約申込についてはクーリングオフの適用なし
    「通信販売」は顧客が広告を見て自主的に契約を申し込むので、クーリングオフの制度の適用はありません。
    そして、オンラインサイトの広告ページを見て顧客が自主的に購入を申し込んでくる場合も、通常は「通信販売」に該当します。
    なお、通信販売については、消費者が返品費用を負担することで一定期間契約を解除できる制度がありますが、この制度も、広告に「返品不可」特約が明示されていれば適用排除できます(但し、その特約はわかりやすく明示的に記載されている必要があります)。

2. キャンセルポリシーによる解除

事業者が事前に定めたキャンセルポリシーがある場合には、そのポリシーに定めた条件で消費者が契約を解除することができます。
先ほど触れた「返品不可」の特約もキャンセルポリシーの一種です。

ポイント💡

  • キャンセルポリシーは事前に広告・契約条件等の文書で明示しておくこと
  • 返金条件は具体的に(例:〇日前まで全額返金)
  • 過度に厳しいキャンセル条件(代金額に比べてキャンセル期間が非常に短いなど)は無効となる可能性があります
  • オンラインセミナーなどの配信サービスの場合は視聴開始後のキャンセル可否を明確にしておきましょう


3. 契約の完了
オンラインセミナーが予定どおり開催され、消費者が受講を完了した場合には、契約は自動的に終了しますので、契約を途中終了させるような場面はありませんが、セミナー終了後に発生しがちな問題もあります。

  • 「内容が期待と違う」といった内容に関するクレーム
  • 技術的トラブルによって視聴できなかった等の不具合

以上のようなクレームが入り、返金、損害賠償の要求などに発展した場合には必要に応じてキャンセルに準じた扱いや、場合によっては裁判でクレームの正否を争うなどの法的対応が必要となります。

1.キャンセルポリシー( 返金ルール)の明確化

トラブル防止のため、以下の各事項はサービス規約として定めたうえで、HP、広告等に掲載して申込者が確認できるようにしておきましょう: 

  • 返金申込の期限
  • 返金額の条件(全額か一部か)
  • 手数料の負担者
  • 返金不可の条件
    ※過度な権利制限は無効となる可能性があります

2. 法律上の義務確認

特定商取引法の適用がある場合には、上記のキャンセルポリシーの明確化のほか、以下の義務を遵守しなければなりません:

  • 契約書面の交付
  • 広告表示の規制遵守

3. 免責事項の設定

クレーム対策として、以下の点を明確にしておきましょう:

  1 セミナー内容について

  • 一般的な情報提供であることの明示
  • 結果保証がないことの説明

2 技術的トラブルについて

  • 受講者側の事情による通信障害は免責されること
  • 配信側の不具合時の対応方針

3 トラブル発生時の対応

  • 代替措置の用意(振替受講など)
  • 返金基準の明確化

技術の進化などによって、比較的容易にオンラインセミナーが開催できるようになったからこそ、契約時には、消費者保護の視点を忘れずに適切なルール作りと運用することが重要になります。
事前の準備と明確なポリシー設定で、多くのトラブルを防ぐことができますので、ぜひ、ご自身のサービスで適切な準備ができているかをご確認いただければと思います。

たまプラーザBizCivic法律事務所では、ビジネス上のトラブルの解決をお手伝いしています。
トラブルが起きた際はもちろん、契約終了に関してご不明点などありましたら、お気軽にご相談ください。