知っておきたい!取引を円満に終了する方法とその注意点
今回は、契約終了の基礎知識として、「取引を円満に終了する方法とその注意点」について、ご紹介します。
契約の締結時は、お互いに「良好な取引をスタートさせよう」という共通の目的がありますが、終了時は利害が対立しがちで、より慎重な対応が必要です。
実際、以下のようなトラブルが発生するケースも少なくありません。
- 「突然の契約解除」による損害賠償請求
- 未払い報酬をめぐるトラブル
- 機密情報の取扱いや競合との取引を巡る紛争
- 引継ぎ不足による事業への影響
そこで今回は、「業務委託契約」「消費者向けオンラインセミナー契約」の契約を例に、2回に分けて、契約の終了方法と注意点についてお伝えします。
契約終了の適切な方法を理解し、トラブルを未然に防ぐためのポイントを押さえておきましょう。

まず、多くの事業者がサービスの提供や外部委託で利用する「業務委託契約」の終了方法について解説します。
契約終了の主な方法として、以下の3つが挙げられます。
1. 合意解約 – 最も円満な終了方法
両者の合意による契約終了は、最もトラブルが少なく円満に終了できる方法です。
ただし、以下の点は必ず押さえておきましょう:
- 終了時の条件(業務の進捗や報酬の支払い)を明確にする
中間成果物がある場合の引渡しや業務の引継ぎ、代金の精算や支払時期、解約金の有無等の終了条件を網羅的に合意する必要があります。 - 合意内容は必ず書面化する
合意した条件は「解約合意書」として書面化して締結しておきましょう。
2. 期間満了 – 見落としがちな注意点
契約期間が終了すれば自動的に契約も終了…と思われますが、見落としがちな注意点もあります。
- 自動更新の規定の有無を確認
契約書に自動更新の条項がないか、自動更新条項がある場合には「期間を更新しない」旨の通知をいつまでに相手方に発信する必要があるかを確認しましょう。 - 更新しない場合は契約書に従い期限(○ヶ月前までなど)を守って通知
自動更新条項がある場合には、その条項に従って、対象となる契約を明示して「更新しない」旨の通知を書面(郵便又はメール、SNS)で通知する必要があります。 - 引継ぎスケジュールを立てて計画的に対応
期間満了による終了の場合であっても中間成果物の引渡しや業務の引継ぎ、未払代金の精算が発生します。
必ず両者で取り決めをしたうえで議事録に残しておきましょう。
3. 契約の解除
契約の解除は、一方当事者が相手方に対して通知することによって契約を強制終了させるといういわば強硬手段です。
場合によってはトラブルが生じる場合があるので、慎重に進める必要があります。
契約解除には、 以下の2つのケースがあります:
- 契約違反による解除:
相手方が義務を適切に履行しない場合(例えば納期に大幅な遅れがあるとか代金を支払わないなど)には、契約違反を理由に解除することが可能です。
契約違反による解除は、書面(原則として郵送)による通知が必要です。
対象となる契約、解除する旨、解除日、解除理由、相手方に求める解除後の対応等を明確に記載しなければなりません。
- 任意解除:
契約書に「○カ月前に通知すれば解除できる」などの規定がある場合にその条項に従って解除することです。
契約書に特に定めがなければ、書面による通知が必要です。


1 予告期間を守る
契約書で定められた予告期間を確認
法律上、相手方の義務違反がある場合であっても、「催告」(相手方に対して義務の履行を求める通知)をしたうえで違反が是正されない場合に初めて解除が認められます。
契約書で、「催告を要せず解除可能」と規定されていない場合、まずは相手方に履行を求める必要があります。
予告なしの解除は損害賠償リスクあり
予告なく解除をすることは相手方に不測の損害を発生させる可能性があります(既に履行の準備をしていた場合など)。
仮に相手方に義務違反があり契約上は「催告を要せず介助可能」と規定されていたとしても、一度は話し合いでの合意解除を目指すことも検討されるべきでしょう(ケースバイケースではありますが)。
通知は必ず書面で行う
口頭での解除は、「言った」「言ってない」の争いとなり、よりトラブルを拡大するおそれがありますので、必ず書面で通知するようにしましょう。
2 解除手続きを確認
解除条項の内容を精査
契約書に解除条項が規定されている場合には、必ずその内容を確認し、その規定に従って解除の手続きを行いましょう。
契約書に簡単な規定しかない場合には、法律(民法など)に従って行う必要があります。
この場合、相手方の債務履行の全部が不能又は履行しない意思を明確にしている場合を除き一定の催告期間を設ける必要があります。
理由が不合理など不当な解除とならないよう注意
相手方の債務不履行の原因がこちら側にもあるような場合など、契約解除に正当な理由がない場合には解除は認められません。
事前に相手方と協議を行うことも検討
仮に契約解除が許される場合でも、トラブル回避のために、可能であれば話し合いによる解決をまずは検討しましょう。
3 事後処理を適切に
成果物の納品、業務の引き継ぎ、未払金の精算
どちらに解除の原因があるかに関わらず、中間成果物の引渡しや業務の引き継ぎ、未払金の精算等についての取り決めは必要になります。
機密情報の返還・処理、守秘義務の確認
業務委託の場合には、委託者と受託者との間で様々な業務上の情報の交換がされていますので、契約終了時には受託者から委託者に対する情報資料の返還や廃棄とともに今後の秘密保持についても確認をしておくことが求められます。

「相手方が契約に違反したので解除したい」という場合でも、相手に是正・改善の機会を与える必要がある場合があります。
契約の解除にあたっては、より慎重に、誠意を持って対応することが、後々のトラブル防止につながります。損害賠償等の想定外の義務が発生するリスクを把握し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
次回は、消費者向けオンラインセミナー契約の終了方法について解説いたします。