【経営者・事業主向け】結婚・離婚・再婚と“会社と財産”の話
経営者や個人事業主の方々とお話していると、
「離婚したら会社に影響はあるのか?」
「再婚を考えているが、相続や事業承継が不安だ」
「結婚する前に、財産の線引きをしておくべき?」
といった“家族と法律”にまつわるご相談を受けることが少なくありません。
家族に関する出来事は一見プライベートのことと思われがちですが、経営者や個人事業主の方々にとっては、経営や財産に直接的な影響を及ぼすことがあります。
今回は、「離婚・婚前契約・再婚と相続」という3つの視点から、経営者が知っておくべき法的ポイントを解説します。

経営者にとって、離婚は単なるプライベートな出来事では済みません。
婚姻中に築いた財産は、名義を問わず「夫婦共有財産」として財産分与の対象となる可能性があるからです。
たとえば、
- 婚姻後に設立・出資した会社の株式や持分
- 会社への貸付金
- 経営者個人名義の事業用の不動産や設備
- 役員退職慰労金
などが分与対象となることがあります。
個人事業主の場合には、事業で使用している預金口座や事業用不動産、自動車、什器備品なども対象に含まれる可能性があるのです。
そうなると、離婚相手が財産分与によって株式を取得し、離婚後も会社の経営に関与する権利を持つことになりかねません。
さらに、多額の役員報酬が離婚後に支払う養育費の算定に影響し、想定外の金銭的負担が継続する可能性もあります。

Aさんの場合
創業10年の会社が軌道に乗った矢先の離婚。財産分与で株式の半分を妻に取られ妻の意向を汲んだ役員が選任されたため、取締役会が常に対立。結局、事業運営が破綻し、会社を解散せざるを得なくなりました。
そこで、Aさんのようなことが起きないようにするためには、
- 事業を法人化し、事業用資産は法人名義としたうえで、株式や持分の価額に見合った現金などの他の資産を準備しておく。
- 個人用資産と事業資産とを分別管理し、私的な費用を事業資産から支出するなど公私混同をしない。
- 役員報酬額を過大にせず相応な程度にしておく
といった対応を日頃から行っておく必要があります。

こうしたリスクを未然に防ぐためには、「夫婦財産契約(プリナップ)」が有効です。
これは、結婚前に夫婦間で財産や離婚時の取扱いについて取り決めておく契約のことです。
たとえば、
- 結婚前に取得・蓄積した資産は、特有財産として財産分与の対象から除外する
- 離婚時の財産分与や解決金に上限を設ける
- 財産分与の対象から事業資産を除外し、その代わりに一定額の支払解決金を定める
といった内容を、公正証書等により合意しておくことが可能です。
日本ではまだ一般的とは言えませんが、特に事業を持つ方や資産を築いている方が結婚を予定されている場合には、事業の維持・存続のために極めて有効な手段です。
夫婦関係を円滑に築くためにも、将来の誤解や争いを避けるための“信頼の契約”として活用できます。
ただし、必ず結婚前に契約する必要があります。
Bさんの場合
再婚前に弁護士に勧められて夫婦財産契約を交わしておいたおかげで、その後の離婚時も会社の株式は守れました。後継者に安心して事業を託せています。


経営者が再婚した場合、特に重要なのが事業承継と相続のバランス問題です。
前婚に子がいて、その子が後継者となっている場合、再婚配偶者との間で会社の支配権や財産の分配をめぐるトラブルが発生することがあります。
たとえば、遺言がない場合には、再婚配偶者が法定相続分(1/2)を主張し、結果として株式の分散や意思決定の混乱につながるおそれがあります。
このようなケースでよくあるリスクは以下の通りです:
- 株式が後継者と再婚配偶者に分かれ、経営権が不安定に
- 遺産分割協議が長引き、事業用資産が処分できない
- 前婚の子と再婚配偶者が遺留分をめぐって紛争に発展
これを防ぐためには、
- 遺言書を用いて後継者に株式を集中させる
- 再婚配偶者の遺留分には生命保険等で公平な補償を設けて対応する
- 法人と個人の財産を明確に分ける
といった対策が不可欠です。
経営者にとって再婚とは、家族の再出発であると同時に、事業の安定性を守る法務設計のタイミングでもあります。

Cさんの場合
経営者である父が再婚後、遺言なしで急逝。継母との遺産分割で3年も揉め、その間、事業資金講座が凍結されたため運転資金が枯渇。従業員や取引先からの信用も大きく損なわれました。
経営者にとってプライベートにおける財産の適切な管理も、事業のリスクヘッジのために必要な対応です。
たまプラーザBizCivic法律事務所では、経営者の皆さまのビジネスのみならずプライベートのご相談も受けておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。


