子どもを守る新しい仕組み ― 日本版DBSとは?
近年、保育園や学習塾、スポーツクラブなど、子どもと接する場で性犯罪が発生するケースが増えています。
子どもは被害を受けても声を上げにくく、加害者が職場を変えて再び同じことを繰り返す危険性も指摘されてきました。
「子どもを安全に守る仕組みが必要だ」という社会の声を受け、イギリスなど海外で広く行われている制度を参考に、日本でも導入されることになったのが 「日本版DBS」 です。
今回は、この新制度の狙いと、事業者がとるべき対策について整理してみましょう。

正式名称は「児童対象性犯罪歴等確認制度」といい、2024年に成立した「こども性暴力防止法」(正式名称:児童対象性暴力等の防止等に関する法律)に基づく制度です。
2026年12月までに施行される予定となっています。
※本制度でいう「子ども」とは、18歳未満の者を指します。

保育所、幼稚園、学校、学習塾、スポーツクラブ、習い事教室など、日常的に子どもと接する事業が対象です。
事業の内容によって、義務適用事業者と任意適用事業者に分かれます。
義務適用事業者と任意適用事業者の違い義務適用事業者と任意適用事業者の違い
| 区分 | 内容 | 照会の義務 | 主な対象 |
| 義務適用事業者 | 学校、保育施設、児童福祉施設など | 必須 | 教職員、保育士、職員など |
| 任意適用事業者 | 学習塾、スポーツクラブ、文化教室など | 認定制 | 指導員、講師、コーチなど |
【義務適用事業者】
子どもと継続的かつ直接接する業務を行う事業(例:学校、認可保育施設、児童福祉施設など)では、 採用時に必ず性犯罪歴の有無を確認することが義務づけられます。
確認が必要となるのは、次のような場面です。
- 新たに職員や講師を採用するとき
- 配置転換により子どもと接する業務へ異動させるとき
- 外部講師やボランティアを受け入れるとき
事業者は、こども家庭庁を通じて「性犯罪歴の有無」を照会します。
結果は「有り」「無し」のみ通知され、詳細な内容は開示されません。
プライバシーにも十分な配慮がなされています。
【任意適用事業者】
学習塾やスポーツクラブ、文化教室、認可外保育施設、放課後活動団体などは、法的義務はありませんが、国の認定を受けて自主的に制度へ参加することができます。
任意適用事業者として登録するためには、次の条件などを満たす必要があります。
- 子どもと継続的に接する事業であること
- 適切な個人情報管理体制を整えていること
- 法務省への申請・登録を行うこと
認定を受けて制度に参加することで事業者に照会義務等は生じますが、「安心して子どもを預けられる事業者」として信頼を得られます。
なお、照会には一定の費用が発生する見込みです。

結果が「有り」と通知された場合、事業者は次のいずれかの対応を検討します。
- 採用を取り消す
- 子どもと直接関わらない業務での採用を検討する
- 配置転換や業務変更を行う
すでに子どもと接する職員についても、法施行時点で照会義務が生じます。
雇用を維持することが難しい場合は、(この点は法施行後の裁判例の積み重ねにもよりますが)解雇が認められる可能性もあります。

制度施行後は、次の4つの観点で体制を整えることが重要です。
1. 採用の流れに組み込む
採用やボランティア受け入れ時に、DBS確認を確実に行う仕組みを設けましょう。
2. 外部委託先にも注意
フリーランス講師など外部の人を雇う場合も、子どもと接するなら同様の確認が必要です。
契約書に「日本版DBSを確認する」と明記しておくと安心です。
3. 情報管理を徹底する
性犯罪歴の有無という情報は非常にデリケートです。
印刷せず速やかに破棄し、閲覧できる人を最小限にするなど、厳重に管理しましょう。
4. スタッフへの周知
制度の目的や情報の扱い方を共有し、全員が正しく理解して運用できるようにしておきましょう。

日本版DBSは、子どもを守るために社会全体で取り組む新しい仕組みです。
制度対応を行うことで、性犯罪のリスクを減らすだけでなく、事業への信頼を高めることにもつながります。

地域の小規模な学習塾や教室も任意適用事業者として登録できます。
「うちは小規模だから」とせず、施行までに採用手続きや契約書の見直しを進めましょう。
制度の詳細は今後、政府からガイドラインが公表される予定です。
たまプラーザBizCivic法律事務所では、日本版DBS制度への対応や契約書整備に関するご相談も承っています。
制度対応は「信頼を築くための仕組み」にもなります。
子どもを守り、地域に安心を広げる取り組みを今から始めましょう。

