未来の社会を担う子供たちの人権教育を考える―事業者の重要な役割とは
先日、子ども向けのイベントで、「法律」や「裁判」「弁護士の仕事」についてクイズ形式で紹介するブースを出店させていただきました。
子どもたちは、正解に喜んだり、間違えて悔しがったり、途中で飽きてしまったりと、反応はさまざまでしたが、その中で改めて感じたことがあります。
それは、日頃何気なく使っている、「人権」「正義」「公正」といった言葉を、子どもに分かりやすく説明することの難しさです。
そこで、今回は、特に小中学校生を対象とした法律教育と事業の関係について考えたいと思います。

「人権」とは、人が人として生まれたことにより当然に持っている権利であり、誰もが平等に、自分らしく生きることを保障する根本的な価値です。
肌の色、性別、障がいの有無、出身国や家庭環境の違いで、不当に扱われることがあってはならない、これが人権の出発点です。
しかし現実には、学校でも「からかい」や「いじり」と称して、相手を傷つける言葉が飛び交う場面があります。児童間のSNS上での誹謗中傷は一部で深刻な状況が指摘されています。
子どもはまだ「これは人を傷つけることだ」という感覚が未発達であり、だからこそ、大人が背中で示し、言葉で伝える必要があります。
人権教育とは、決して「知識を教える」だけのものではありません。
相手の立場になって考え、違いを認め、弱い立場の人に共感する感受性を育てる。そのような大人の姿勢を見せることも人権教育の一つになります。

「正義」や「公正」は法律を支える大切な考え方です。
「正義」とは、弱い立場の人が傷つけられているとき、見過ごさずに守ること。
例えば、クラスのなかのいじめを止めるのはこどもにとって非常に勇気のいることです。しかし、見て見ぬふりをするのではなく、「やめよう」と声をかけることができる子どもを育てるには、「それが正義なのだ」という確信を育む教育が必要です。
「正義」は、人権教育を通じて伝えるべき、最も大切な価値観の一つです。
そしてもう一つ、今こそ強調すべき価値観があります。
それが、「公正(フェアネス)」です。
「公正」とは、単に「全員に同じルールを当てはめること」ではありません。事情や条件の違いを踏まえて、お互いに納得のできる扱いをすることです。
例えば、家庭の事情で宿題ができなかった子に対し、頭ごなしに叱るのではなく、その子に合った支援を考える姿勢、これが公正です。
企業でも同じです。障がいのある従業員や子育て中のスタッフなど、それぞれが等しく活躍できる環境を整えることは、まさに「公正」の実践です。
私たちは、正義と公正を、道徳的な理想論として語るのではなく、「日常の中で何を選び、どう振る舞うか」という判断と行動の軸として子どもたちに伝える必要があります。
そして、その力は子どもの頃にこそ育まれるのです。

人権教育は、学校や行政だけの役割ではありません。
地域で事業を営む企業や個人事業主の姿勢や行動は、子どもたちにとって日常的な「社会の見本」になります。
例えば、
- 約束を守る
- 困っている人を助ける
- 誰に対しても公平に接する
こうした日常の振る舞いは、子どもたちの目に映り、そのまま「社会とは、こういうものなのだ」という認識につながります。
また、従業員や取引先とのやりとりの中で示す誠実さ、公正な契約条件、立場の弱い相手を守る判断は、社内だけで完結するものではありません。
そこで培われた価値観は家庭にも持ち帰られ、親の行動や言葉を通して子どもたちに伝わります。
地域の事業者は、子どもたちの生活圏に近く、直接的な影響力を持つ存在です。
だからこそ、「正義や公正を日常で実践する大人の姿」を見せることが、最も身近で効果的な法教育になります。
それは単なる社会貢献ではなく、地域の信頼や企業ブランドを高めることにもつながります。

地域で子どもと接する事業者の皆さんは、知らず知らずのうちに“教育者”になっています。
日々の言葉遣いや態度は、子どもたちに「社会とはこういうものだ」という認識を植え付けます。
- 他者の違いを尊重する接し方
- 正義ある行動を「格好いい」と伝える言葉
- 誰かを守る勇気を認める空気づくり
こうした日常の積み重ねこそが、子どもたちの心に残る“生きた法教育”です。
当事務所では、地域の事業者の皆さまと連携し、「人権」「正義」「公正」に対する理解の場を作り、子どもたちに伝える取り組みを続けてまいりたいと考えています。


