ネット上の誹謗中傷への対策は?新プロバイダ責任法のポイント

こんにちは。

田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。

事業を営む上で、クレームを完全に避けることは難しいものです。
前回のメールでは、「悪いクレーマー」の見分け方やその他の営業妨害、さらに万が一、反社会的勢力に出くわしたときの対処法などをお伝えしました。

今回は、ネット社会で急増している、ネット中傷への法的な対応をお伝えします。

SNSでの誹謗中傷が大きく問題視されています。

総務省の資料によると、SNSに関する相談件数は年々増加しており、なかでも名誉毀損やプライバシー侵害に関する相談が、その大半を占めています。

総務省「令和3年度インターネット上の違法・有害情報対応相談業務等請負業務報告書(概要版)」から

ネット上で他人を誹謗中傷すると、法律上どのような制裁を受けるのでしょうか。

刑事上の制裁としては、

  • 脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
  • 侮辱罪(拘留(30日未満)又は過料(1万円未満))
  • 名誉毀損罪(3年以下の懲役又は禁錮若しくは50万円以下の罰金)
  • 信用棄損罪・業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)

が定められており、民事上の責任としては、

  • 不法行為に基づく損害賠償責任
  • 行為の差止を受ける責任

等が考えられます。

SNSなどネット上でなされた誹謗中傷については、プロバイダ責任制限法(以下、「法」といいます)で、プロバイダ等が負う損害賠償責任の範囲や、被害者が発信者(加害者)を特定するために利用できる手続きなどが定められています。
2022年10月、その改正法が施行されました。

ネット上の誹謗中傷の特徴として誹謗している人物が匿名であることが多いため、まずその人物を特定する必要があります。

法改正前は、その人物を特定するための手続きである発信者情報開示請として

  1. コンテンツプロバイダ(SNSや掲示板など書き込みがされたサイトの運営者)を相手とするアクセス・ログ情報(タイムスタンプ、IPアドレスなど)開示の仮処分申し立て
  2. 次に、アクセスプロバイダ(インターネットへの接続事業者)を相手とする発信者情報(氏名、住所、メールアドレスなど)開示のための情報保存の仮処分申立て及び情報開示請求の訴訟提起

が必要でした。

この制度のもとでは、被害者にとっては多くの時間とコストがかかって負担が大きく、また、開示に時間がかかっているうちにログの消去などで発信者の特定が困難になってしまうという課題がありました。

しかし、2022年10月1日から改正法が施行され、発信者情報の開示手続を簡易かつ迅速に行うことができるように、発信者情報の開示請求を1つの手続で行うことを可能とする、新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。

今回の法改正によって、これまで複雑な手続のために泣き寝入りせざるを得なかった被害者が法的手段を採れるようになれば、被害者救済効果が期待できそうです。

また、このような救済事例が増えることによって、社会全体に「匿名で人格攻撃しても特定されて法的な責任を負わなければならない」という認識が広まり、ネット中傷行為が抑制される可能性もあります。

このように救済制度が簡素化され改善されたとは言え、やはり万が一ネット中傷に巻き込まれたら、被害者側の初動が大切ですので、速やかに次のように行動しましょう。

  1. コンテンツプロバイダの窓口に対して削除請求を行おう
  2. コンテンツプロバイダが削除に応じない場合には、弁護士に相談して、中傷者に対して法的措置を講じるためのコストと効果を確認しよう
  3. 中傷者の特定が成功するかは時間の勝負!すぐに弁護士に相談しよう

ここまで複数回にわたって、クレーマー/反社/ネット炎上対応についての基礎知識をお伝えしてきました。

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