ネットビジネスの必須項目!クーリング・オフと特定商取引法に基づく表記

こんにちは。

田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。

私たちの生活に、もはや欠かすことの出来ない、ネット取引。

そんなネット取引を支える、いわゆる「ネットビジネス」には、対面による従来型のビジネスとは異なる特徴があります。
すなわち、

  1. 売買取引をするにあたって品物を直接確認できない
  2. 取引相⼿と直接会うことができないため、相手の実態がわからず、信頼関係を築きにくい
  3. 店舗にとって購⼊者は不特定多数。個別の取引条件の要求に応じることが難しい

このようなネットビジネスの特徴から生じるトラブルを回避するために、ネットビジネスに関わる経営者、個人事業主などビジネスマンに知っていただきたいいわゆる3つの法律、「消費者契約法特定商取引法」「景品表示法」について、計6回にわたって解説をお届けしています。


前回は2つ目の法律「特定商取引法」とはどういう法律なのかをお伝えしました。

今回は特定商取引法が定めるクーリング・オフ制度などの取引法上のルールと、ネット販売事業者が守らなければならない「特定商取引法に基づく表記」についてお伝えします。

※以下は、ネット販売を含む通信販売についての規定を中心に説明します。

前回は、特定商取引法の定める表記義務などに違反した場合の行政処分についてご紹介しましたが、その他に、消費者と事業者間のトラブル防止を目的とした取引のルールも定められているので、この機会に知っておきましょう。

特定商取引法は、消費者と販売者との間のトラブルを防ぐとともに、消費者を保護するための消費者による契約解除(クーリング・オフ)制度などを設けています。


契約申込の撤回または契約の解除(クーリングオフ)

消費者は、契約を申し込んだり締結した場合でも、商品の引渡し等を受けた日から数えて8日以内であれば、事業者に対して、無条件で申込みの撤回や契約の解除ができます。

「クーリング・オフ」という言葉はもともと「頭を冷やす」という意味で、一度は衝動的に契約してしまったけど、冷静に考えて「契約は撤回したい」という消費者の保護を図る制度です。

※ ただし、ネット販売などの通信販売については、事業者が予め契約申し込みの撤回や解除について特約を表示していた場合は、その特約によります。
従って、事業者としては、クーリングオフの適用を回避したい場合、ホームページ等で返品の条件について明確に表示しておく必要があります。


申込の取消し

消費者は、ネット販売事業者による不当表示などによって誤認して契約を申し込んだ場合には、その申込を取り消すことができます。


事業者の行為の差止請求

適格消費者団体(※)は、事業者が不特定・多数の者に不当な勧誘、不当な契約条項の提示、誤認させる表示などを行い、または行うおそれがあるときに、事業者に対して、行為の停止もしくは予防、そのほかの必要な措置をとるよう請求ができます。

※ 「適格消費者団体」とは、不特定多数の消費者に代わって、消費者に不利益な事業者の行為について改善・中止を求めたり、差止請求(さらに一定の要件を備えた団体は損害賠償請求などの被害回復のための民事上の請求)を行う団体です。

また、特定商取引法は、通信販売を行う事業者が広告で表示しなければならない事項を定めています。

そこで、ネット販売事業者は自分の通販サイトなど広告媒体に「特定商取引法に基づく表記」という法定の事項を記載した表示を用意する必要があります。

お客様にとって、「特定商取引法に基づく表記」がサイトに表示され、運営主体や取引条件について一覧で確認できることで、サイトを信頼して取引に入ることができることから、そのような取引の安全を図るための制度です。

※ なお、表示義務に違反した場合は、業務改善の指示(法第14条)や業務停止命令(法第15条)、業務禁止命令(法第15条の2)などの行政処分の対象となります


以下は、ネット販売事業者が「特定商取引法に基づく表記」で記載すべき項目です。
コメントとあわせてご確認ください。

販売業者名
個人事業者の場合は氏名や屋号、法人の場合には商号を表示します。

代表者名・責任者名(法人の場合)
販売責任者名を表示します。通常は代表者名を表示します。

所在地(住所)及び電話番号
個人事業者の場合には店舗所在地又は住所、法人の場合には本店所在地を表示します。

申込の有効期限
いつまでの申し込みが有効なのかを表示します(前払い決済の場合など)。

商品代金等その他の必要な支出・負担
商品代金等及びそれ以外にかかる料金(送料、消費税、手数料など)を全て表示します(商品代金等は広告本文に記載すれば問題ありません)。

※ クレジットカード決済の手数料は、クレジット会社との契約上購入者負担にできない場合が多いのでご注意ください。 また、送料を請求する場合は、具体的な金額を記載します。

特別な販売条件
一注文あたりの販売数量上限など、特別な販売条件があるときは、その内容を表示します。

支払期限及び支払方法
注文後又は納品後何日以内に支払が必要か、取扱い可能な支払方法(代引き、銀行振込、クレジットカード、電子マネーなど)を表示します。

引渡し時期
「注文日(前払いの場合には入金日)より何日以内に発送」などと表示します。

不良品などの交換条件や責任範囲
不良品が見つかった場合などの交換、返金の条件その他ショップ側の責任範囲を表示します。

キャンセル・返品の条件
キャンセルや返品の可能期間及び返品の条件(開封後や名入れの商品は返品不可など)を記載します。
また、返品の際、購入者側と販売者側のどちらが送料を負担するか表示します。

使用環境や使用条件など
ソフトウェアプログラムやコンテンツ商品などについて、その商品を使用するために必要なPCの環境、仕様、性能など(「使用OS:Windows 11以上」など)を表示します。

連絡先メールアドレス
電子メール広告をするときには、事業者の連絡先メールアドレスを表示します。


上記はあくまでも一例です。商品やサービス、販売方法によっては、更にその他の項目を追記する必要があります。

今は個人でも簡単にネットショップなどを開くことが出来る便利な時代ですが、ネット販売も商取引に他なりません。

個人事業者であっても、特定商取引法などの法律を遵守し、トラブルのない運営をしていくことが必要です。

お客様に十分な情報を提供して、安心して注文してもらえるネットビジネスを心がけていくことが何よりも大事なことです。

法律を順守するうえで困ったこと、わからないことがあれば、いつでも専門家に相談をしてください。

当事務所も特定商取引法などネットビジネスに関連する法令についてのご相談をお受けしていますので、お気軽にご連絡ください。