お客様への営業トークに注意! 消費者契約法対応の具体例

こんにちは。

田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。

私たちの生活に、もはや欠かすことの出来ない、ネット取引。

そんなネット取引を支える、いわゆる「ネットビジネス」には、対面による従来型のビジネスとは異なる特徴があります。
すなわち、

  1. 売買取引をするにあたって品物を直接確認できない
  2. 取引相⼿と直接会うことができないため、相⼿の実態がわからず、信頼関係を築きにくい
  3. 店舗にとって購⼊者は不特定多数。個別の取引条件の要求に応じることが難しい

このようなネットビジネスの特徴から生じるトラブルを回避するために、ネットビジネスに関わる経営者、個人事業主などビジネスマンに知っていただきたいいわゆる3つの法律、「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」について、計6回にわたって解説をお届けしています。


前回に引き続き、今回取り上げる法律は「消費者契約法」。

法律の内容については、前回お伝えしましたので、今回は具体的な事例をお伝えしていきます。

消費者契約法というと、消費者の側からの被害事例に着目するのが通常ですが、個人事業主やフリーランス、中小企業の経営者の立場からは、お客様に「不当な契約!」と思われないように、注意すべきポイントを抑えておく必要があります。

軽やかな営業トークで契約をもらったのに、あとから契約を取り消されてしまった・・・ということにならないよう、理解しておくべき規制の一つがこちら。

虚偽の事実を告げたり、消費者に不利益な事実を告げなかったり、不確実なのに確実であるかのように説明したり、不必要な量の商品購入を勧めたり、退去を求められたのに自宅から退去しなかったり、消費者がお店から退去したいというのに退去させなかったり・・。

消費者を誤認、困惑させるような勧誘によって締結した契約は、消費者によって取り消されるおそれがあります。

さらに平成30年の改正法によって、若年者など社会生活上の経験が乏しいことによって、進学、就職、結婚、生計、容姿、体型等についての過大な不安を抱いている消費者に対し、その不安をあおって、正当な理由がないのに、願望実現のためには契約締結が必要である旨を告げたり、高齢者など判断能力が低下していることに乗じて不安をあおって契約を締結した場合、さらにいわゆる霊感商法、デート商法なども取消事由に加えられました。

具体的には、
「この化粧品を使えば必ず若返る」
「この土地は必ず値上がりする」
「この講義を受講しないと絶対合格できません。」
「このエステコースに申し込まないとこれ以上の体重減量は無理です。」
などと、過度に相手の期待や不安をあおったり、

相手が何度も「帰ってほしい」というのに居座ったり、

高齢者などに、
「このサービスに加入しておかないと、すぐに老後の生活が行き詰まってしまいますよ。」
などと、生活不安をあおって契約を締結させることなどが、取消の対象となりますので、熱心に営業するあまりこのような一線を越えないように注意することが必要です。

もう一つ、トラブルに発展しがちな規制がこちら。

消費者の利益を不当に害する契約条項は、無効となります。

具体的には、
「当ジムは、会員の施設利用に際し生じた傷害、盗難等の人的・物的ないかなる事故についても一切責任を負いません」
「販売した商品については、いかなる理由があっても、ご契約後のキャンセル・返品、返金、交換は一切できません」
「試供品の提供後〇〇日以内に解約の連絡がない場合には、継続的に購入する契約が当然に成立します」

こういった条項は、不当な条項とされて無効になります。


このように消費者契約法には、契約内容や営業方法について様々な規制が設けられていますが、営業方法について一つだけポイントを示しておきますと、消費者の現状を客観的に分析した上で、それを改善するのに適した商品を勧めること自体は、決して不当な営業活動ではない、ということです。

例えば、現在合格水準に至っていない受験生に対し、その事実を伝えた上で効果的な学習教材を勧めることや、今後の生活の不安を抱えた高齢者に対し、その不安に共感した上で安心できる金融サービスを紹介することなどは、正当な営業活動といえるでしょう。

実際には、正当な営業活動と、規制される営業活動との境目が難しいのです。

そこで、事業者の営業活動の方針としては、顧客の不安をあおるものではなく、自社商品のメリットに着目してもらうように説明するのが安全です。

ぜひ、皆さんの営業トークが、「この商品を購入しないと願望が実現できない(不安が解消されない)。」とマイナス面を強調する表現になっていないかにをチェックしてみてください。

もちろん、事実に基づく必要がありますが、「この商品を購入すればこの部分が改善でき、願望の実現に資する(不安が解消できる)。」という具体的なプラス面をメインに挙げたトークを意識することが、違法にならないための対策になります。

言葉の綾のような話ですが、「不安だから契約した」のと「願望の実現に近づきたいから契約した」のでは、ちょっとの違いのようで大きな違いです。

営業トークにおいては、この点に注意しましょう。


次回は、ネットビジネスにかかわる3つの法理の2つ目「特定商取引法」についての解説を、お届けします。