その販促キャンペーン、景品表示法違反かも!?
こんにちは。
田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。
私たちの生活に、もはや欠かすことの出来ない、ネット取引。
そんなネット取引を支える、いわゆる「ネットビジネス」には、対面による従来型のビジネスとは異なる特徴があります。
すなわち、
- 売買取引をするにあたって品物を直接確認できない
- 取引相⼿と直接会うことができないため、相手の実態がわからず、信頼関係を築きにくい
- 店舗にとって購⼊者は不特定多数。個別の取引条件の要求に応じることが難しい
このようなネットビジネスの特徴から生じるトラブルを回避するために、ネットビジネスに関わる経営者、個人事業主などビジネスマンに知っていただきたいいわゆる3つの法律、「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」について、計6回にわたって解説をお届けしています。
最終回となる今回は、3つ目の法律「景品表示法」の具体例をお伝えしていきます。
前回見たように、景品表示法は事実に基づかない広告や過剰に高価な景品等で消費者による商品・サービスの選択を歪めるおそれのある行為を制限する法律です。
この法律で禁止されている行為には、大きく分類して3つの類型がありましたが、今回はその具体的な事例を見ていきます。
ご自身の事業で広告や景品付きキャンペーンなどを行う場合には、これらの行為に該当しないように注意が必要です。
商品やサービスが実際よりも優れているように見せる
「優良誤認表示」
【食品】無農薬作物
実際には、無農薬ではない作物であるにもかかわらず、あたかも「無農薬の作物」であるかのように表示している。
【自動車】中古自動車の走行距離
実際には、10万km走行していた中古車であるにもかかわらず、あたかも「走行距離3万km」であるかのように表示している。
【塾・スクール】合格実績広告
実際には、他の塾やスクールと異なる方法で数値化し、適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも「合格実績No.1」であるかのように表示している。
【エステサロン】施術による即効・持続効果
実際には裏付けとなる合理的な根拠資料がないにもかかわらず、あたかも、施術を受けることで、直ちに痩身になるかのように表示をしていたが。
【除菌グッズ】ウィルス除去等の効果
実際には、裏付けとなる合理的な根拠資料がないにもかかわらず、あたかも、商品を使用するだけで化学的な効果により、周辺の空間を除菌等するかのように表示をしている。
【食品】ダイエット食品の痩身効果
裏付けとなる合理的な根拠資料がないにもかかわらず、あたかも、食事制限をすることなく痩せられるかのように表示している。
取引条件を実際よりも有利に見せる
「有利誤認表示」
【食品】特定日の売出し
「毎月29日は肉の日」などの映像、音声を流して、実際には他の日と価格が変わらないにもかかわらず、あたかも、特定日の売出しにおいては、対象商品を通常時の販売価格の半額で販売するかのように表示している。
【通信教育サービス】キャンペーン割引
実際には、殆どの期間で割引を実施しているのにもかかわらず、あたかも、期間限定で正規受講料から値引きするキャンペーンを実施しているかのように表示している。
【歯列矯正】サービスの利用に必要な追加費用の不記載
実際には、別途、矯正装置の購入などが必要であるにもかかわらず、あたかも、初診料や検査診断料などとして記載された「〇〇円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示している。
不適切に高額な景品配布を規制する
「景品類規制」
【一般懸賞】 (くじや抽選、パズル等の優劣で景品を提供する懸賞)
(禁止される行為)
- 懸賞により提供する場合に、景品類の最高額(取引価額が5000円未満の場合に取引価額の20倍、5000円以上の場合に一律10万円)を超えた景品を提供する
- 景品の総額が、売上予定総額の2%を超える
- カードあわせ(たとえば、商品に外から見えない形で入っているプロ野球チームの選手カードの全員分を集めると景品がもらえるなどの懸賞)
なお、新聞、雑誌、不動産、医療機器等については各業界ごとに景品類の最高額が決まっています。
【共同懸賞】(商店街など一定の地域(市町村等)の同業者の相当多数が共同で実施する懸賞)
(禁止される行為)
- 最高額(30万円)を超えた景品を提供する
- 景品の総額が、取引予定総額の3%を超える
【総付景品】(商品・サービスの購入者全員に提供したり、来店者全員に提供するなど懸賞によらずに景品類を提供する場合)
(禁止される行為)
- 景品の最高額(取引価額が1,000円未満の場合に一律200円、1000円以上の場合には取引価額の10分の2)を超えた景品を提供する
今回は、景品表示法の実例をお伝えしてきましたが、意外と身近なところで、ある事柄も多かったのではないでしょうか。
特に「優良誤認表示」ではないか、と指摘された場合には、その表示が合理的な根拠によって裏付けられたものであることを示す資料が必要になります。
また、2023年1月現在、消費者庁は、インターネット上で自らの広告であることを隠して広告を出稿するいわゆる「ステルスマーケティング」を規制する告示を検討中ということです。
この告示が発効した場合には、いわゆる口コミなどを通じたマーケティング方法にも注意をする必要が出てくるでしょう。
広告、マーケティングに関する法規制は複雑で多岐にわたります。
広告内容についていつでも相談できる専門家を用意しておくことをおすすめします。
たまプラーザBizCivic法律事務所では、広告や景品についての法律相談もお受けしていますので、お気軽にご連絡ください。