そのビジネス、「特定商取引」では?知らなかったでは済まされない「特商法」
こんにちは。
田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。
私たちの生活に、もはや欠かすことの出来ない、ネット取引。
そんなネット取引を支える、いわゆる「ネットビジネス」には、対面による従来型のビジネスとは異なる特徴があります。
すなわち、
- 売買取引をするにあたって品物を直接確認できない
- 取引相⼿と直接会うことができないため、相手の実態がわからず、信頼関係を築きにくい
- 店舗にとって購⼊者は不特定多数。個別の取引条件の要求に応じることが難しい
このようなネットビジネスの特徴から生じるトラブルを回避するために、ネットビジネスに関わる経営者、個人事業主などビジネスマンに知っていただきたいいわゆる3つの法律、「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」について、計6回にわたって解説をお届けしています。
今回は2つ目の法律「特定商取引法」についてお伝えしていきます。
特定商取引法とは、消費者トラブルが生じやすい取引を対象に、トラブルを防止し消費者の利益を守るためのルールを定めている法律です。
具体的には、訪問販売や通信販売など特定の取引類型を対象に、事業者が守るべき規制やクーリング・オフなど消費者を守る制度を定めています。
実際に特定商取引法の対象になる取引類型は下記の7種類になります。
1.訪問販売
消費者の自宅等を事業者が訪問し、商品の販売等を行う取引。
一般には、営業マンが飛び込みで訪問して商品を販売することを想定していますが、路上等で呼び止めて勧誘し営業する、いわゆる「キャッチセールス」や、SNS等によって営業目的であることを明示せずに営業所に誘い出して行う営業、いわゆる「アポイントメント・セール」も対象となります。
2.通信販売
消費者がテレビやホームページ等の広告を見て、電話/FAX/インターネット等で申し込みをする形態の取引。
ネットショップなどの通販サイト事業は、ここに当てはまります。
3.電話勧誘販売
消費者に事業者が電話をかけて勧誘し、商品等の営業を行う形態の取引。
4.連鎖販売取引
「他の人を販売員にすると、あなたも収入が得られる」と消費者を勧誘し、商品等の営業を行う形態の取引。
いわゆる「マルチ商法」の一つです。
5.業務提供誘引販売取引
「仕事を紹介するので収入が得られる」などと消費者を勧誘し、その仕事に必要であるとして商品等の営業を行う取引。
内職を紹介するという触れ込みで高額商品を売りつけるような、いわゆる「内職商法」などが規制対象となります。
6.特定継続的役務提供
特定の7種類のサービスについて、長期/高額の契約を締結して行う取引。
これらの特定の7種類のサービスとは、エステティック、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療です。
7.訪問購入
消費者の自宅等を事業者が訪問し、消費者の物品を事業者が買い取る取引。
不用品買取業者を装って個人宅を訪問しながら、貴金属など高額品を強引に買い取るいわゆる「押し買い」は、この規制類型に含まれます。
以上のいずれかの特定商取引を行う事業者は、特定商取引法の内容を把握して、規制を遵守しなければなりません。
各取引類型に応じて事業者が守るべき規制は様々ですが、共通して適用される主な規制の内容は次のとおりです。
1.事業者名等の明示義務
勧誘開始前に、事業者名や勧誘目的である旨などを相手方に告げなければなりません。
ネットショップなどの通信販売では、明確で分かりやすい内容の広告(サイト内の商品ページなど)を表示することが定められています。
2.不当な勧誘行為の禁止
勧誘の際に事実と異なることを伝えたり、重要な事実を故意に伝えなかったりしてはなりません。
一度契約を断った人に対して、再度勧誘する行為も許されません(再勧誘の禁止)。
3.書面交付義務
契約の締結後等に、相手方に重要事項を記載した書面を交付しなければなりません。
4.広告規制
広告には、事業者名や住所、電話番号等の表示をしなければなりません。
また、虚偽/誇大な内容の広告をしてもなりません。
たとえば「1粒飲めば簡単に痩せる」「誰でも高収入を得られる」などの根拠のない宣伝文言はNGです。
上記のような規制に違反した場合は、業務改善指示や業務停止命令、業務禁止命令が課されたり、罰則が課されたりします。
最悪の場合、お店の経営自体ができなくなってしまいます。
また、消費者は、契約後一定期間内は、無条件で契約を解除することができます。これを「クーリング・オフ」と言います。通信販売以外の特定商取引に認められている制度です。
次回は、ネットショップ運営者には欠かせない、特定商取引法に基づく表記や、クーリング・オフについてお伝えします。