保存版!クレーム対応の基本的な手順
こんにちは。
田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。
事業を営む上で、クレームを完全に避けることは難しいものです。
前回のメールでは、そんなクレームの種類と、法的な位置づけについてお伝えしました。
実際にお客様のクレームにあったとき、大抵の人は萎縮して何も言わなかったり、早く逃れようとひたすら謝ってしまったりしがちです。
しかし、そういったその場しのぎの対応では、お客様の気持ちが収まらず、クレームが大きくなってしまう恐れすらあります。
クレーム対応の際には、冷静に段階を踏んでいくことが重要です。
段階1 問題を確認する
段階2 対応を確認する
段階3 事実を確認する
段階4 問題を解消する
段階5 適切に回答・報告する
段階6 悪いクレームを排除する
今回は、上記の6つの段階について個々に紹介していきますが、実際の対応の際には、迅速に処理するため、複数の段階を同時進行で対応しなければならないこともあります。
まず、相手が指摘している問題を正確に把握しましょう。
そして、それが本当にあなたが解決しなければならない「問題」なのかを評価します。
あなたが解決しなければならない「問題」か否かの判断基準には、相手との契約書や約款、申込書などの法的な書類のほか、カタログや仕様書、広告資料、ホームページなどの記載内容があります。
万一、相手方との間で裁判などの法的な紛争になった場合には、こういった基準と常識に従って、品質不良や欠陥、不具合などの「問題」の有無が判断されます。従って、これらの基準による限り、例えば、商品の機能に影響しない軽微なキズ等は、通常は品質不良に該当しません。
サービスや顧客対応など無形の役務を提供している場合は、「問題」の有無の判断はより難しくなりますが、まずは、相手が何を不満だと主張しているのかを正確に聞き取ることが重要です。
気をつけなければならないのは、相手の主張を正確に確認することです。
ちぐはぐな対応は、もともと品質やサービスの問題についてのクレームだったものが、顧客対応のクレームにつながることもあります。注意しましょう。
また、後日の証拠として、可能な限り、相手から確認した内容はメールやFAX、手紙、録音、メモなどで記録に残しておきましょう。
相手が何を「問題」だとしているのかがわかったら、次に、相手はどのような対応を求めているのかを把握しましょう。
通常のクレームでは、交換/やり直し、損害賠償/返金、謝罪などが求められることになるでしょう。
そのうえで、果たしてあなたがそのような対応をする必要があるのかを判断していきます。
対応をする必要があるか否かの第一の判断基準は、やはり契約や規約、申込書、ホームページの記載などになりますが、これに加えて、ビジネス上の必要性、つまり、周囲の評判や相手方との今後の取引の確保を期待できるかなどもあわせて二次的に考慮しながら判断することになるでしょう。
また、同じようなクレームをしてきた他の取引先との公平にも注意をしなければなりません。
ここで重要なことは、法的な判断に基づく基本的な対応を押さえたうえで、ビジネス上の観点も踏まえてケース・バイ・ケースで考えていくことです。
相手が主張している問題と対応が確認できたら、次は事実を確認します。
製品の場合には現物のほか仕様書や品質記録などを確認し、サービスの場合には具体的に提供したサービス内容や提供時の状況を作業記録や相手とのやり取りの内容など詳細に確認します。
そのなかで問題が確かに確認できた場合には、その原因や責任の所在も確認します。
次に、判明した問題を解消し、適切に回答・報告します。
問題の内容と契約内容等に応じて、交換/やり直し、損害賠償/返金 謝罪・・・などの対応で問題を解消していきます。
また、問題解消後、または必要に応じて処理中であっても、相手方に対して「どのような問題があってどのように対応した(している)のか」を適宜報告します。
報告は、後日の記録、証拠化のため、書面(メール含む)によるのが原則で、例えば、以下のような事項を記載しておくことが考えられます。
- 苦情の内容(苦情の日付や状況などの記載もできるだけ細かく)
- 調査結果及び行った調査の方法
- 既に行った対応及び今後の対応
- 相手方名、報告日、報告者
ここまでが、通常の(よい)クレームを受けた場合の対応になります。
悪いクレームの対応は、契約義務の範囲外です。
悪いクレームは「営業妨害」ですので、ビジネス上の観点からの対応は不要です。法律で対応しましょう。
例えば、過大な金銭や土下座など理不尽な要求する、執拗に電話をかけてくる、怒鳴り声をあげるなど、少しでも「おかしい︕」と思ったら、警察や法律専門家に相談し、アドバイスを受けたり支援を受けることをお勧めします。
民事的な対抗手段として、訴訟も含めて損害賠償や差止めの請求、刑事上の手当としては、警察に対して業務妨害罪や恐喝罪、強要罪などの被害届を出して、捜査を求めることが考えられます。
このような「悪いクレーム」は皆さんの日常では、めったに遭遇しないものかもしれませんが、このような対応があることを知っておくだけでも、いざというときに冷静な対応が可能になると思います。
次回は、悪いクレーマーの見分け方や、その他の営業妨害について紹介していきます。