【保存版】武器になる契約書のチェックポイント(サンプルダウンロードあり)

こんにちは。

田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。

前回は、契約書を作成する際のポイントについて、トラブル事例とともにご説明しました。

今回は、売買契約、業務委託契約など、契約の種別ごとに、「武器になる契約書」のチェックポイントを契約書のサンプルとともにご紹介します!

まずは、一般条項のチェックポイントを解説します。

そもそも、一般条項とは、具体的な取引内容に関係なく、一般的にどのような契約においても規定される標準的な条項のことです。

対象商品や価格、支払条件等の本則の規定に比べるとチェックがおろそかになりがちな部分ではありますが、変わらず重要な条項ですので、思いがけないリスクを負担しないよう、チェックは確実に行いましょう。

以下は、「一般条項」として通常規定される主な条項です。
これらの条項が規定されているか、内容に不審な点がないか、を確認してください。

◆秘密保持条項

契約に関連して交換した情報についての秘密保持義務を規定します。
個人情報の取り扱いについても規定することが一般的です。
◆解除・損害賠償
債務不履行や業績悪化による信用不安等による契約解除や損害賠償責任を規定します。
特に損害賠償責任については、必要な範囲の責任は相手に負ってもらうとともに、こちらが想定外の責任を負わないようにしておくことが大切です。

◆譲渡禁止
契約上の地位・権利を相手の了解を得ずに第三者に譲渡することを禁止することが一般的です。
但し、契約によっては一方当事者だけ譲渡が可能となっている場合もあります。
意図せぬ第三者にサービスを提供しなければならなくなった(!)などの不本意な状況にならないよう、注意する必要があります。

◆不可抗力
天災等の注意義務を尽くしても予防できない事態における当事者の債務免除や軽減について規定します。

◆反社会的勢力排除
当事者やその関係者が暴力団等の反社会的勢力に該当した場合の契約解除や損害賠償責任を規定します。

◆準拠法
契約を解釈する場合の準拠法を規定します。
通常は日本法となります。
なお、特に海外の取引先と契約する場合に相手国法が指定されている場合は、念のため弁護士に相談されることをお勧めします。

◆管轄・仲裁
契約に関する紛争を解決するための管轄裁判所や仲裁機関を規定します。
ネット取引など、全国に取引先がある場合には特に重要となります。

◆協議
当事者間で契約に関する意見の齟齬や問題が生じた場合の協議について規定します。
いきなり裁判に訴えるのではなく、穏やかに話し合って解決できるよう、ぜひ設けておくべき規定です。

ここからは、個別の類型のお話になります。

まずは、売買契約書のチェックポイントを紹介します。

契約書を交わす場合はもちろんですが、注文書やホームページの申込画面を通じて契約する場合にも、以下の条項がきちんと規定されているか必ずチェックしてください。

売買契約書に最低限必要な条項

  • 目的物
    明確に特定されているか(名称、個数、品番など)
     
  • 納期及び引渡し方法
    納入日を明確に特定しているか。
    引き渡し方法は、買主から出向いて受け取るのか(取立債務)、売主が買主に持参するのか(持参債務)、又は郵送か、など
     
  • 代金等
    代金表示は税別か、送料別か、支払通貨は何か、など
     
  • 支払日及び支払方法
    支払日は明確に特定されているか。
    現金払いか振込か、電子マネーでの決済はよいか、など

買主側のチェックポイント

  1. 納期は遵守されるか(納期は適切か、納期が遅れそうな場合に売主に事前報告義務があるかなど)
  2. 無償保証期間が規定されているか、品質に問題や欠陥が見つかった場合の対応について規定されているか
  3. 保守条件は定められているか
  4. 代金以外の支払義務を負わないか
  5. 第三者の知的財産権侵害や法律上の規制により使用や再販できなくならないか。使用できなくなった場合の売主の責任は規定されているか

売主側のチェックポイント

  1. 不合理な返品を要求されないよう返品条件が明確か
  2. 代金は支払ってもらえるか。代金不払いの場合について規定しているか
  3. 目的物の品質等について過大な責任を負わないか

当事務所では、契約交渉のたたき台となる売買契約書のサンプルをご用意しています。
ぜひ、下記のボタンからダウンロードしてご利用ください。 

また、内容や利用方法についてご不明な点があれば、いつでも当事務所までお問い合わせください。

次に、業務委託契約書のチェックポイントをご紹介します。

業務委託契約書に最低限必要な条項

  • 委託業務の内容
    明確に特定されているか(委任、準委任、請負の区別※)、成果物や納品物は正確に表示されているか
  • 業務期間又は納期
    明確に特定されているか
     
  • 委託料金
    複数の委託業務がある場合には、業務毎に内訳表示するか、全体で一括表示するか

    仮に業務の途中で契約を終了する可能性がある場合には、委託業務ごとの金額を契約で規定しておくことによって、終了時精算の基準とすることができます。
     
  • 支払日及び支払方法
    分割払いか、一括払いか、期間均等払いか

委託者側のチェックポイント

  1. 委託業務や成果物は明確かつ十分か
  2. 業務期間や業務スケジュールは適切か
  3. 保証期間や保守の条件は十分か
  4. 予想外の支払が発生しないか
  5. 成果物の所有権や知的財産権の帰属は適切か

受託者側のチェックポイント

  1. 業務や成果物は適切に限定されているか
  2. 業務期間は十分か
  3. 検収基準は明確か
  4. 保証や保守の責任は限定されているか
  5. 対価の支払いは確保されているか
  6. 成果物の知的財産権の帰属は適切か

※「業務委託契約」であっても、その実態が、委任・準委任・請負のいずれかで、受託者の負う義務の内容や性質に違いが生じます。

委任、準委任、請負それぞれのちがいを簡単に説明すると、下記のようになります。 

  • 委任契約……法律行為を委託する契約(例えば、弁護士に訴訟代理を依頼する契約がこれに該当します)
  • 準委任契約……事実行為(事務処理)を委託する契約(例えば、コンサルティング契約などが通常これに該当します)
  • 請負契約……仕事の完成を義務づける契約(例えば、ホームページの開発契約などが通常これに該当します)

ただ、実際には、取引の内容に応じて、準委任契約の性質と請負契約の性質が混在した契約も考えられます。
従って、契約書を作成するにあたっては、実際の取引に適した条項を個々に検討する必要があります。

当事務所では、業務委託契約書について交渉のたたき台となるサンプルをご用意しています。
ぜひ下記のボタンからダウンロードしてご利用ください。

最後に、約款作成のチェックポイントを紹介します。

そもそも「約款」とは、同一条件の契約を大量に行う場合に備えて、予め共通の契約条項を規定しておく文書のことです。

実際に契約をする場合には、個別の契約条項を規定するのではなく、契約条件はその約款に準拠することを規定しておけばよいという便利なものです。

オンライン取引などをされている皆さんであれば既に作成してホームページに掲載していると思いますが、約款は、一度作って終わりではなく、時々見直しておくことをおすすめします。

  1. 契約の申込・承諾に関する手続は明確か
    申込と承諾の方法が規定されているか
    承諾をするか否かが事業者側の裁量によることが規定されているか
     
  2. 関連する法律に準拠しているか
    商材やサービスに応じて関連法(医療品の場合には薬機法、食料品の場合には食品衛生法、消費者向け取引の場合、消費者契約法、特定商取引法、景品表示法等)に抵触しないよう規定しているか
     
  3. 想定されるリスク(ユーザーの問題行動など)にそなえているか
    サービス妨害、虚偽の届け出、他のユーザーに対する迷惑行為、犯罪行為などを禁止し、違反者の使用を停止、中止させ登録抹消できるように規定しているか
     
  4. わかりやすい表現をつかっているか
    できるだけ専門用語を使わず、難しい用語には説明を付け、ユーザーの権利制限、義務付けに繋がる規定は太文字など目立つように表示しているか
     
  5. ユーザーの利益に配慮しているか
    業者側の利益を一方的に優先したりユーザーの利益を過度に制限したりせず、できる限り公平で合理的な規定となっているか

当事務所では、約款についても、皆様の検討のたたき台となるサンプルをご用意しています。
ぜひ、下記のボタンからダウンロードしてご利用ください。