「契約書」はなぜ必要か?そして「契約書」をビジネスの武器にするとは?!
こんにちは。
田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。
ビジネスの様々な場面で、頻繁に登場する「契約」について、前回は、「そもそも契約とはなにか?」について、お伝えしました。
今回は、契約「書」を作成する必要性についてお伝えします。
まず、2つの事例をご紹介します。
フリーランスのデザイナーHさんは、個人事業主のお客様からウェブサイトを制作する仕事を請け負いました。
契約書を作成せず、「見積書」と「請書」だけで作業に着手したため、作業を進めるにつれて「そもそもどこまでの業務が委託の対象に含まれるのか?」という委託業務の対象範囲についての認識に食い違いがあることが次第に明らかとなり、お客様との間で不穏な雰囲気となったために、Hさんはやむを得ず不本意な仕事も引き受けざるをえなくなりました。
次に副業でせどりをしているS君の事例です。(「せどり」とは、ネットなどを経由して商品を安く仕入れて販売し差額を儲ける仕事です)
S君は、海外向け輸出販売をしている方と、口頭で買付契約を結んでいました。
「買付に必要な費用は販売者(つまりS君の取引相手)が負担する」と約束していたのですが、取引の途中で「商品発送時の梱包資材」は「買付に必要な費用」といえる否かという点で、お互いの認識が異なり、トラブルに発展してしまいました。
この2つの事例は、ごく一部にすぎませんが、いずれも契約書を作成していなかったために不利益をこうむったり、トラブルが生じた事例です。
他にも、契約書を締結しておかなかったことで、大きなトラブルになってしまった事例はたくさんあります。
ただ、契約書を作成しよう!となると、
- 締結までの交渉に時間がかかりそう・・・
- 難しい!面倒くさい!
- せっかく良好な関係なのに、将来のトラブルについて話すことで雰囲気が悪くなるのでは?
といった心配やデメリットが、頭をよぎりますね。
しかし、このようなデメリットを上回るメリットが、「契約書」にはあります。
大きくまとめると、それは次の3つになります。
1 まず、契約の存在及び条件が明確となります
前回のメールでもお伝えしましたが、契約は約束ですから、理屈の上では、口頭でも契約は有効に成立します。
口頭だけの契約でも、お互いに信頼関係がある場合には問題は起きないかもしれません。
しかし、お互いの認識に食い違いが生じたり、取引を取り巻く環境や事情が変わると、契約の条件をめぐって「言った」「言わない」の争いとなることがよくあります。
契約書は、この「言った」「言わない」の争いを予防するための最も有効な手段となるものです。
書面化しているので、お互いに「言った」「言わない」の議論になったり、後付けで相手にとって都合のよい条件を押し付けられることを防ぐことができます。
2 次に、必要な契約条件を漏らさず取り決める機会を確保できます
契約条件について取引先と交渉をしていく中で、どういった条件を合意しておくべきなのかが分かってくるので、その抜け漏れのチェックがしっかりできるようになります。
ただし、契約書をただ作成するだけでは、この抜け漏れのチェックはできません。
取引の種類や内容ごとにやっておくべきチェック項目があり、それらを押さえて契約書を作成する必要があります(この点については、次回ご説明します)
3 契約書を作成し、必要なチェックを行うことによって、契約トラブルを回避することが可能となります
取引は短時間で終わるものもあれば、ある程度の期間をかけて継続的に実施していくものもあります。
特に、継続的な取引については、想定外の事項が起こる可能性があります。
そこで、想定外の事項が起きた場合の対応などについてもきちんと合意し、それを契約書に反映させてチェックすることで、トラブルを回避することができます。
このように、契約書を作成するメリットはとても大きいので、ぜひ契約書の作成と交渉を、皆さんのビジネスの通常業務(ルーチン)にしてください。
また、できるだけ、手間をかけずに契約書を作成する方法もあり、次回はその方法についてもご紹介する予定です。
そして、契約書は、その活用次第で、契約トラブルを防ぐ手段としてだけではなく、契約交渉とビジネスを成功させる「ビジネスの武器」にもなってくれる、そんな機能もあります。
では「武器になる契約書」とはどんなものなのでしょう?
まずは、防衛手段としての契約書があります。
ビジネスをしていく上で想定されるリスクというものがありますが、それに備えた契約書ということです。
これは最低限押さえておきたいもの。
つぎに、攻撃手段としての契約書があります。
これは、ビジネスをする上で、目的とする利益、獲得したい利益を確実に獲得できるような条件が備わった契約書のことです。
ビジネスをする上ではとても役に立ちます。
さらに、「いざっ」となったら即使える契約書というものもあります。
防衛手段としても完璧だし、攻撃手段としても完璧だけれど、裁判所に行ったときに「これ契約書ですか?」と言われてしまうような契約書だと使えない場合もあります。
ですから、訴訟を見越した適式な契約書にしておく必要があります。
この3つが揃うことで、みなさんにとって「武器になる契約書」を完成させることができるのです。
今回は、なぜ契約書を締結するのか、そして契約書をビジネスの武器にするとはどういうことかをお伝えしました。
次回は、契約書を作成する際のポイントを、トラブル事例とともに解説し、武器になる契約書の「作り方」について具体的にご説明します! ご期待ください!