アルバイトを雇ったとき、どんなことに注意すべきか、弁護士さんに聞いてみた!

前回は、初めて雇用主になる時の注意点をお届けしました。今回は、人を雇用した後に起きる様々な問題や悩みに対してお答えします。


美香さんはHP制作事業を行っています。
初めてアルバイトを雇うとき、どのようにしたら良いのか分からなかったので、前回、法律事務所の先生にお話を聞きし、雇用主になることができました。

そして、人材募集の広告に応募してきたとても感じがよく経歴も申し分のない人を無事採用したのですが、実際に雇用主になってみると不安なことがたくさん出てきたので、また法律事務所にアドバイスを受けに行きました。

美香

先生のアドバイスで良い方を雇うことができました!
ところで、忙しいとついつい言葉が厳しくなってしまうため、パワハラにならないかが気になってしまいますが、ネットなどで検索すると、雇用主には従業員の安全に配慮する義務があると書いてありました。

弁護士

従業員の安全に配慮する義務、いわゆる「安全配慮義務」は、雇用する上でとても大切な義務です。
関連する法律としては、「労働基準法」「労働安全衛生法」やいわゆる「パワハラ防止法」「男女雇用機会均等法」「育児介護休業法」などがあります。
正社員だけではなく、契約社員やアルバイト、パート社員の雇用であっても、雇用主には安全配慮義務が課されるので、注意が必要です。

美香

ハラスメントを防ぐための措置や、労働時間・休暇の管理、それから産業医やカウンセラーの関与を考えなければいけないと思うのですが、法律が全然わからなくて。アドバイスをいただけませんか?

弁護士

まず、ハラスメントには「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」などがあり、それぞれの定義やその防止のために雇用主が行うべきことが法律やガイドラインで規定されています。
どのような行為がハラスメントに当たるのかを明確にし、それを防止するための方針、ルール、マニュアルを設定し、それに基づいて従業員教育を行い、相談窓口を設けて、問題があれば直ちに是正する仕組みを運用することが大切です。

労働時間の設定や有給休暇の付与等についても労働基準法の厳格な規定があるので、適切に遵守し、無理な労働や健康被害が起こらないようにしなければなりません。
労働基準法に違反すると労働基準監督署からの是正監督の対象となりますし、ハラスメントを放置するなどによって従業員に被害が生じれば、民事訴訟を提起され損害賠償責任を課される場合もありますので、十分な対策を講じる必要があります。

 美香

そうなんですね。
それから、私やアルバイトさんの心と体の健康を維持するための産業医やカウンセラーをお願いしようと思っているのですが、どうでしょうか?

弁護士

働く上で心と体の健康はとても大切なことですね。
産業医は健康診断や労働環境の健康管理に関与し、カウンセラーはストレスや心理的な問題に対応します。
従業員の数が50名を超えると法律上は産業医の設置が義務付けられています。また、従業員数がそれに達しなくても、雇用主としては、従業員に健康で長く勤務してもらうために、これらの専門家と連携して協力し、従業員の健康をサポートすることが望ましいでしょうね。

 美香

なるほど!
これらのアドバイスを元に、具体的な方針を策定していこうと思います。

美香

アルバイトの皆さんは、よく働いてくれているのですが、そのうちのお一人が健康上の理由で退職したいとの申出を受けました。
そんなときは何に注意した方がいいのか、事前に行なったことが良いことなどのアドバイスをいただけませんか?

弁護士

もちろんです。
退職に関しては、いくつかのポイントがあります。
まず、アルバイトを雇う前に、雇用契約書に明確な退職に関する規定を盛り込むことが重要です。
退職の通知期間や提出すべき書類などを契約書で明示しておくと、円滑な手続きが期待できます。

美香

そうなんですね。それと、誓約書についても何か特別な注意が必要でしょうか?

弁護士

退職時の誓約書には、業務中に知りえた機密情報の保護に関する規定や退職後の連絡先を記載することが一般的です。競業先への就職を制限する規定(競業避止規定)を規定している誓約書も時々見かけますが、従業員の労働の権利を制限するものとして無効とされる場合があるので、そのような規定を設ける場合には、注意して下さい。

美香

引き継ぎや引き止めに関してはどうでしょう?

弁護士

引き継ぎについては、担当業務やプロジェクトに関する情報を、新たな担当者にしっかり伝達してもらうことが必要ですので、雇用主が主導して引き継ぎのスケジュールや引き継ぎ資料の作成等を余裕をもって指示しておくべきでしょう。
引き止めについては、従業員に新たな提案や条件を提示して慰留することは問題ありませんが、過剰な引き止めはパワーハラスメントに該当する可能性がありますので、慎重に進めることが大切です。

美香

なるほど。退職時の手続きは案外複雑で、注意が必要ですね。しっかり対策を講じて、トラブルなく進められるようにしようと思います。ありがとうございました!

弁護士

どういたしまして。いつでもお気軽にご相談くださいね。成功をお祈りしています。


たまプラーザBizCivic法律事務所では、今回のような具体的なご相談を受け付けており、必要に応じて、就業規則などの社内ルールやマニュアルの作成をお手伝いしています。
ご不明な点がある場合には、お気軽にご相談ください。