フリーランス新法の影響で、発注側/受注側どう変わる?

こんにちは。

田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。

「新しい働き方」として脚光を浴びているフリーランス。

前回は、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」)の概要と、先日公布されたフリーランス新法の概要をお伝えしました。

今回は、フリーランス新法の中身を解説しながら、発注者/受託者、双方の気をつけておくべき点を解説していきます。

※ 以下の文章では、ガイドラインに従って「人を雇わず自身の経験やスキルを活用して収入を得る人」を「フリーランス」と呼んでおり、副業者も含んでいます。

以前から、フリーランスなどの下請業者を守る法律として、下請法(下請代金支払遅延等防止法)があり、下請業者は下記のような発注者(親事業者)のムチャぶり、不当行為から一定の保護を受けることができました。

ただ、個人事業主保護という観点からみたとき、この法律には重大な弱点がありました。

それは、この法律で規制対象となる「親事業者」は、「資本金が1000万円超の法人」に限られているという点です。

日本企業の中で資本金1000万円未満の企業は全体の約58%を占めており(総務省令和3年経済センサス)、法人成りしていなくても手広く事業を営む個人もいます。

そのような法人、個人と取引をするフリーランスも同様のトラブルに巻き込まれる可能性があり、フリーランスの増加に伴って、そのようなトラブルからの保護の必要性が認識されてきました。

こうしてできたのが、ガイドラインであり、フリーランス新法なのです。

では、このフリーランス新法によって、フリーランスやフリーランスと取引をする事業者はどのようなポイントに注意をすればよいでしょうか。

ポイント1 従業員を雇用しているか否か

まず、フリーランス新法に基づいて保護されるのは、「特定受託事業者」です。

特定受託事業者」とは、「業務の受託をする事業者であって従業員を使用しないもの」です。
つまり、物品製造、ソフトウェア等の開発、サービス業を営み従業員を使用していない法人及び個人がこれにあたります。
かなり保護範囲は広いですよね。(以下、「特定受託事業者」と「フリーランス」と呼びます)

次に規制の対象となるのは、「特定業務委託事業者」です。
特定受託事業者に業務委託する事業者で従業員を使用している場合がこれにあたります。

このように、従業員を雇用しているか否かで、保護の対象となるのか、規制の対象となるのかが決まってくる、というところがポイントなので、特に従業員を雇用している(※)法人、個人の事業者は気を付ける必要があります。

※ 短時間雇用や一時雇用にとどまる場合は除外されています。

ポイント2 フリーランスと取引をする場合の順守事項

さて、新法の規制対象となる「特定業務委託事業者」は、以下の項目を順守しなければなりません。

(1)フリーランスに業務委託する場合には、業務内容、報酬額等の取引条件を書面でフリーランスに交付する。

(2)フリーランスからの業務成果の受領日から60日以内に報酬を支払うこと

(3)フリーランスとの業務委託において以下の行為が禁止されること

  1. フリーランスに責任がないのに業務成果の受領を拒否する
  2. フリーランスに責任がないのに報酬を減額する
  3. フリーランスに責任はないのに成果物を返品する
  4. 通常相場に比べて著しく低い報酬額を不当に定める
  5. 正当な理由なく自己の商品購入等を強制する
  6. 自己のために経済的な利益等の提供させる
  7. フリーランスに責任はないのに業務内容を変更したりやり直しを指示する

ポイント3 フリーランスの就業環境整備

また、特定業務委託事業者には、以下のようなフリーランスの就業環境の整備義務も規定されました。

  1. フリーランスを募集する際の虚偽表示禁止、条件等記載の正確性確保
  2. フリーランスの育児介護等と業務の両立への配慮
  3. フリーランスに対するハラスメント等の相談対応の整備
  4. 業務委託の中途解除の制限(30日前までの予告義務)

ポイント4 規制違反のペナルティ

フリーランスからの被害申告等により規制違反が発覚した場合には、公正取引委員会等による助言、指導等の他、是正の命令等の行政処分の対象となり、命令違反に対しては罰則(50万円以下の罰金)が規定されました。


今回は、先日公布されたフリーランス新法の概要をお伝えしました。

法の施行はもう少し先ですが、フリーランスが労働者に準じた保護が図られるようになると、その働きやすさがクローズアップされ、ますます個人で開業する人が増えるかもしれません。

より多くの人が組織にとらわれない働き方を選択し、それぞれの事情に応じて自由に働けるようになれば、より活気ある社会になることも期待できそうです。