発注者の無茶ぶりをしない、させない。フリーランス新法とは!?
こんにちは。
田園都市線沿線・地域密着型法律事務所、たまプラーザBizCivic法律事務所の弁護士 木村俊樹です。
「新しい働き方」として脚光を浴びているフリーランス。
前回は、政府によって、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」)が作られた背景をお伝えしました。
今回は、ガイドラインの内容と、気をつけるべきポイントをお伝えしていきます。
※ 以下の文章では、ガイドラインに従って「人を雇わず自身の経験やスキルを活用して収入を得る人」を「フリーランス」と呼んでおり、副業者も含んでいます。
ガイドラインでは、フリーランスが取引をする際に気を付けるべき点が説明されています。
フリーランスの方は、契約条件や取引内容がガイドラインで挙げられているような規制項目に抵触していないかをよく確認したうえで、契約の締結に進むことを心がけてください。
(具体的な適用事例については紙幅の関係で省略しますが、ご不明な点があれば当事務所までご質問ください)
①「優越的地位の濫用の防止」の観点からの規制(独占禁止法・下請法関連)
【報酬】
- 報酬の支払遅延
- 報酬の減額
- 著しく低い報酬の一方的な決定
【発注、作業及び成果物】
- 正当な理由のないやり直しの要請
- 一方的な発注取消し
- 成果物に含まれる権利の一方的な取扱い
- 役務の成果物の受領拒否
- 役務の成果物の返品
【不公平な取引条件の防止】
- 不要な商品や役務の購入・利用強制
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 合理的な必要範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
- その他取引条件の一方的な設定・変更・実施
②「労働法遵守」の観点からの規制(労働契約法、労働基準法等関連)
フリーランスは、取引にあたって、雇用契約ではなく、業務委託契約を締結します。
業務委託契約においては、作業者は打診を受けた仕事を受けるか否か、また受けた仕事をどのように進めるかについて自ら決めることができます。
これに対して、雇用契約の場合は、雇用主(使用者)の指示した仕事は(もちろん雇用契約の範囲内ではありますが)受けなければなりませんし、その仕事の進め方についての雇用主の指示に従う必要があります。
他方で、雇用契約は労働基準法などの労働者を保護するための法令の適用を受ける立場にありますが、業務委託契約の場合はその保護対象外になります。
但し、締結された契約が雇用契約と業務委託契約のいずれにあたるのかは、契約のタイトルや契約条項のみならず、業務の内容や実態、労働環境などに基づいて判断されます。
業務の実態などから上記表にあるような「雇用契約」の特徴を満たすと判断される場合には、契約は雇用契約、作業者は「労働者」として扱われ、労働関係法令の保護を受ける立場に立ちます。
締結された契約は「業務委託契約」としての体裁をとっていても、実際には勤務時間を決められ時間ベースで報酬額が決まり、事実上、依頼された仕事は拒否できず、その仕事の進め方や勤務場所なども発注者が決めている実態であれば、雇用契約と判断される可能性が高いわけです。
このガイドラインの発表は、フリーランスとの契約についての発注側の認識をある程度変える効果がありました。
しかし、基本的にガイドラインというのは既存の法律を前提にその適用を個別事例によって明らかにしたものにすぎません。
フリーランスを実質的に保護する法律として、従来から「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)がありますが、この法律で規制される発注者は資本金1000万円以上の企業のみということで、小規模の会社や個人を客先とするフリーランスの保護には十分とは言えませんでした。
そこで、つい先日、2023年5月12日にフリーランスに関する新しい法律、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律25号)が公布されました。
施行日は、公布日から1年半とされており、まだ決まっていませんが、フリーランスにとっては、いざというときに自分を守ってくれる法律になりますので、ぜひ、十分に理解しておかれるとよいと思います。
今回は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の概要と、先日公布されたフリーランス新法の概要をお伝えしました。
次回は、フリーランス新法の中身を解説しながら、発注者/受託者、双方の気をつけておくべき点を解説していきます。