不動産の相続について弁護士と不動産業者が対談してみました!
前回は、個人の事業承継についてお届けいたしました。
今回は、不動産の相続について、私、弁護士の木村と不動産コンサルタントの大川さんとの対談をお届けいたします。
大川さんは、横浜市中区で「日経管財株式会社」を経営されており、不動産売買、調査、開発、及びこれらのコンサルティング事業を行っていらっしゃいます。
弁護士や税理士などの士業との連携も積極的で、私も、日頃、相続や離婚等、不動産に関係する案件で色々相談したり、支援をいただいています。
さて、最近は、親御さんが不動産を残して亡くなった後の相続で、相談に来られる方が多くなってきています。
中には、実家が地方で空き家になってしまったり、山林や田畑などの相続案件もあります。
今回は、そんな不動産相続について、不動産事業者と弁護士という異なる立場でざっくばらんにお話しました。
不動産というと、空き家問題や相続での実家の処分の問題がありますよね。
大川さんは全国的に不動産業を展開されていますが、相続などの絡みでどんな問題が多いですか?
兄弟で相続して兄が住んでいるけど、弟である自分は何ももらえないとか、実家は空き家になっていて固定資産税がかかってしまっているので、売却をしたり、賃貸にそのまま貸したり、壊して有効活用したいなどのご相談が多いですね。
いずれの場合も、不動産ならではの壁や障害があって、自分の意思にそぐわなくても我慢しているというケースが多いように感じます。
相続で不動産を承継した方からはそういう話をよく聞きます。
遺産分割をして登記もしたのだけどメリットが全くないという不満ですね。
自分にも持分権があるのだけど、実際には別の兄弟が家族で住んでいるというような場合には、兄弟関係に影響が生じることも考えられます。
そのような共有者間の利害関係の解消には、「共有物分割」という法的な手続きがあるのですが、時間やコストがかかりますし、家族関係にひびが入ることを懸念して二の足を踏み不本意な状態が継続してしまっているケースもあると思います。
そうならないようにするためには、相続の最初の段階、遺産分割の時にきちんとした条件で合意しておくこと、更にはもっと遡って、遺言で財産承継の明確化をはかっておくことが一番望ましいと思います。
相続というと何か「得る」ものがあるはず、と思っている方も多いと思いますが、実際には必ずしもそうとは限りません。
大川さんは、遠隔地にある不動産、或いは山や畑などの相続で相談を受けた場合、どんなことを助言されますか?
数年前、都内に住んでいる方から相談を受けたケースでは、親御さんが残された山林の処理が問題となりました。
その方は、コストがかかるだけなので放棄を希望したのですが、現地に住む親戚たちが猛反対。
その方が放棄してしまうと、次の相続順位に当たる親戚が山や林道の管理をしなければならず、土砂崩れや不法投棄などのおそれもあり、れに対する対応の責任を負いきれない、ということだったんですね。
その頃は、土地を国庫に帰属させる制度が施行されていなかったので、どちらにしてもとても大変なことなのですが、結局その方が相続されました。
今は、一定の条件を満たした土地については国庫帰属制度があります。できれば、親御さんがご健在のうちに管理が難しい土地を国庫に帰属させておくことも有効です。
ちなみに、相続を放棄しても次の管理者が決まるまでは、放棄者には財産の管理責任があるんですね。
次順位に相続する人がいない場合などには、相続財産清算人の選任を裁判所に申し立てて、その人に財産の管理、処分を任せてしまう、という方法もあります。
建物が立ったままで放置された土地とか、雑林と呼ばれる、用材にならな雑多な木からなるきちんと管理されていない山林等は、国に引き取ってもらうこともできず、自分で管理しなきゃいけなくなっちゃうんですよね。
確かに、相続財産清算人に任せるのも有効ですね。
きちんとした利益がないのに管理責任だけはあるという状況は、まさに負の相続ですよね。
遠隔地や山林など管理が難しい不動産の相続が問題となった場合には、早めに弁護士や不動産会社に相談することをお勧めします。
寄与分の相談も、とても多いです。
寄与分とは、例えば一人で親の介護をしたり親の事業に資金を出したりして相続財産の維持や増加に「特別の寄与」をした相続人について、相続分を多めに認める制度のことです。
遺産分割の際に相続人間の話し合いで決めることも可能ですが、話し合いがまとまらなければ裁判所が審判で決めることもあります。
ただ、裁判所は、「特別の寄与」をなかなか認めないのが実際で、普通のレベルで介護をしていたというだけでは寄与分は認められません。
そういう場合、何か解決する方法はあるんですかね?
相続される人が遺言書を作成し、その中で特別に寄与してくれた人に厚めに相続分を認める遺言を残しておくことが最も有効です。
今は、法務局で遺言書を預かるサービス(遺言書保管制度)が提供されており、数千円程度で利用できますし、遺言者が亡くなった際には相続人や受遺者(法定相続人以外で遺産を残された人)にも遺言書が保管されている旨が連絡されるようになっています。
遺言書を自宅に保管しておくと、亡くなっても遺言書が発見されない危険があるので、私は遺言書保管制度の利用をお勧めしています。
公正証書による遺言書も一般的ですが、遺言者死亡後の相続人らへの連絡制度がないので、私はその点でも法務局保管制度は優れた制度だと思っています。
不動産の相続、負の相続、寄与分は相続の際に非常に揉めやすいポイントとなっています。
このような場合には、ぜひ早めに対策をしておきましょう!
たまプラーザBizCivic法律事務所では、相続のお手伝いをしています。
ご不明な点のご相談やご質問等は、ぜひ、お気軽にどうぞ。