従業員を守れていますか?法改正で企業に求められるカスハラ対策とは
最近、企業経営者の方から「顧客からのクレーム対応が限界!」という声を聞くことが増えています。
例えばこんなケースです。
- 長時間にわたる執拗なクレーム
- 担当者への暴言や人格否定
- 何度も繰り返される電話
- 店舗での居座り
こうした行為は今、カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)として社会問題になっています。
実際、企業の約3割が顧客からの著しい迷惑行為に関する相談を受けているという調査もあり、従業員の精神的負担や離職の原因にもなっています(厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」)。
また、近年では、対応した従業員が体調を崩したり、休職・離職に至るケースも問題になっています。そのような場合には、企業が従業員から「安全配慮義務違反」で訴えられるリスクも指摘されています。
更に、従業員の休職や離職が発生すると、新たな採用コストの発生や人的リソースのひっ迫等によって職場環境の悪化につながる可能性もあります。
こうした状況を受けて国は法律を改正し、企業に適切なカスハラ対策を設けて実施するよう求める方向へと動き出しました。今回はこのカスハラ問題について、中小企業経営者が知っておきたいポイントを整理します。

これまで顧客からのクレームは「サービス改善のための意見」として扱われることが多く、企業はできるだけ対応することが当然と考えられてきました。
しかし近年では次のようなケースが問題になっています。
- 商品やサービスとは関係のない要求
- 過剰な値引き要求
- 暴言や威圧的な言動
- 長時間の拘束や執拗な電話
こうした行為は単なるクレームではなく、社会通念上許される範囲を超えた行為としてカスハラに該当する可能性があります。
そして重要なのは、このような行為によって従業員の就業環境が害される場合、企業には従業員を守る責任があると考えられている点です。
つまり、カスハラは単なる接客の問題ではなく、従業員を守るための労務管理の問題として捉えられるようになってきています。

こうした背景を受け、労働施策総合推進法が改正され、カスハラに関する規定が新たに整備されました。施行日は令和8年10月1日です。
この改正により企業にはハラスメント防止のための対応を整えることが求められるようになります。
例えば次のような対応です。
まず
- カスハラを許さないという会社の方針を明確にする
- 「会社として従業員を守る」という姿勢を社内で共有する
次に
- 従業員がカスハラを受けたときに相談できる体制を整える
そして
- 実際にカスハラが発生した場合、事実関係を確認し、被害を受けた従業員への配慮や再発防止を行う
つまり企業は、顧客対応を現場任せにするのではなく、組織として対応する体制を整える必要があるということです。

カスハラ対策というと大企業の問題のように思われがちですが、実際には人員が限られる中小企業ほど影響が大きいと言われています。
担当者が一人で対応を抱え込み、精神的に追い詰められてしまうケースも少なくありません。そこで経営者として、少なくとも次の3つは検討しておくことが重要です。
STEP① カスハラ対応のルールを決めておく
- 暴言や人格否定があった場合は会社としての対応に切り替える
- 長時間のクレーム対応は一定時間で切り上げる
- 同じ内容の不当なクレームの繰り返しには対応しない
このような基準を社内で決めておくことで現場の従業員もどこまで対応すればよいのか判断しやすくなります。
STEP② 社内の対応体制を整える
- カスハラ対応責任者を決める
- 一定時間を超えた場合や暴言があった場合には以後責任者を含めて複数人で対応する
- 悪質なケースでは弁護士等の社外専門家に確認するルートを確保しておく
といったルールをあらかじめ決めておくことが大切です。
また、トラブルに備えて日時や対応内容を記録しておく(録音、録画及びメール、文書での連絡に切り替えるなど)ことも重要です。
STEP③ 悪質なケースへの対応を決めておく
すべてのクレームに無制限に対応する必要はありません。
- 電話対応を拒否する
- 来店を制限する
- 書面で警告する
- 弁護士を通じて警告し、警察等に通報する
といった方法も考えられます。

カスハラは、いま多くの企業で発生している深刻な問題です。そして法改正により、企業には従業員を守るための体制づくりが求められる時代になりました。
カスハラ対策は単なる接客の問題ではなく、従業員を守り、職場環境を維持するための重要な経営課題です。
もし自社の対応方針や社内ルールがまだ整理されていない場合は、この機会に一度見直してみることをおすすめします。
また、カスハラ対応では、対応の線引きや法的リスクの判断が難しいケースも少なくありません。そのため、顧客対応のガイドラインの作成や悪質なケースへの対応方針について、弁護士など専門家のサポートを受けながら整備しておくことも有効です。
あらかじめ専門家と連携しておくことで、実際にトラブルが発生した際にも適切な対応が取りやすくなり、企業としてのリスク管理にもつながります。
当事務所では、カスハラ対策関連の助言・支援を行っております。ぜひ、お気軽にご連絡ください。


